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精麻(せいま)
麻の茎から剥いだ皮の繊維を、さらに丁寧に表皮を取り除いて研ぎ澄ました、日本古来の天然繊維です。神社のしめ縄や鳥居、お祓いに使う祓串(はらえぐし)など、神聖な場面で古くから使われてきました。
「麻」という字が入っているため大麻やマリファナを連想する方も多いのですが、精麻に使われるのは大麻草の 茎の部分 であり、規制の対象となる葉や花穂とはまったく別の部位です。神社で神職の方が手にする清めの道具にも使われている、由緒正しい素材なのです。
このページでは、「精麻とは何か」をはじめて知る方に向けて、その歴史、神社との深い関わり、そして暮らしへの取り入れ方までを、できるだけわかりやすくご紹介します。

精麻について語るとき、避けて通れないのが言葉の混乱です。「麻」「ヘンプ」「大麻」「マリファナ」——これらはしばしば同じ植物を指しますが、文脈によって意味が大きく変わります。
整理すると、次のようになります。
ここで少しややこしいのが、精麻に使われる植物は、法律上「麻」と表示できないという点です。1962年に制定された家庭用品品質表示法で「麻」の定義が限定されたため、神事で使われてきた日本古来の麻は、表記上は「大麻」と呼ぶしかない、という事情があります。
しかし繰り返しになりますが、規制されているのは葉と花穂であり、精麻が使われる 茎の部分は規制の対象外 です。神社のしめ縄や祓串に使われているのは、まさにこの茎から作られた繊維なのです。
精麻が「神聖なもの」とされてきた背景には、大きく3つの理由があります。
第一に、神社で罪や穢れ(けがれ)を祓うものとして、古くから使われてきたこと。第二に、天皇陛下の即位儀礼で用いられる麁服(あらたえ)の素材や、大相撲の横綱の化粧まわしなど、日本の大切な行事で使われてきたこと。第三に、日本全国に約8万社あるとされる神社と、深く結びついてきたことです。
参考までに、全国のコンビニエンスストアが約5万7千店なのに対し、神社は約8万社。神社がいかに日本人の暮らしに根づいてきたかがうかがえます。
麻と日本人の関わりは非常に古く、千葉県館山市の沖ノ島遺跡からは約1万年前の麻の種子が見つかり、年代測定によって裏付けが取れているとされています。古事記が編纂された712年よりもはるか昔から、麻は人々の生活に欠かせないものだったと考えられています。

神道には絶対的な経典や教祖がなく、八百万(やおよろず)の神々を敬う、おおらかな信仰のかたちがあります。そのなかで共通しているのが、神様の前に出る際に 罪や穢れを清める「祓(はらい)」や「禊(みそぎ)」の儀式 を大切にすることです。
神社で手や口を清める手水(てみず)も、賽銭を捧げることも、鈴を鳴らすことも、すべて簡略化された祓・禊の一種だと言われています。そして、神職の方がより本格的な祓の儀式で手にするのが、精麻のついた祓串です。
精麻が選ばれてきた理由として、成長が早く丈夫であること、丁寧に育てられた精麻は白く美しく清潔感があること、古来より用いられてきたことなどが挙げられます。ただ、はっきりとした起源は分かっておらず、「昔から神道に根づいてきた」という事実そのものが、精麻の特別さを物語っているとも言えるでしょう。

実は、国産の精麻はいま、とても希少なものになっています。1953年には約3万7千軒あった麻農家が、現在ではわずか数十軒ほどにまで減少していると言われています。栽培に免許が必要であることなど、さまざまな事情が背景にあります。
そのため、神社によっては海外産のヘンプやビニール素材で代用しているところもあるのが現状です。古くから神道と結びついてきた「日本産の麻」は、気づかないうちに失われつつあるのかもしれません。
国産の精麻づくりは、茎から剥いだ皮の繊維を傷めないよう一本一本手で裂き、撚(よ)りをかけて糸に紡いでいく、手間のかかる作業の連続です。日本の土で、古くからの伝統に則って一つひとつ手仕事で作られる——そこには作り手の想いと、長い歴史が込められています。
精麻を日常に取り入れた方からは、さまざまな声が寄せられています。科学的な数値で示すことは難しいものですが、体験談として、次のような感想が語られています。
こうした感じ方は人それぞれで、効果を保証するものではありません。けれども、古来より大切にされ、神事に用いられ続けてきた精麻には、理屈を超えて惹かれる何かがあるのも確かです。まずは気軽に触れて、自分なりに感じてみていただけたら嬉しく思います。